第5章 *赤い瞳の奥に♀(セト)
「そっすか…そんなことが…今まで気づいてやれなくてごめんす…」
『き、気にしなくていいよ…多分、すぐにやめると…』
「2ヶ月たってもまだ被害にあってるんすよね?」
セトの言葉に、反論できず押し黙る。
セトはバイトを辞めれば…と提案するも私が頑なに辞めたくないと言うと今度はセトが開きかけた口を閉ざした。
『…この事は他の皆には言わないでほしいの…心配かけたくないから』
「で、でも『お願いっ!』…わかったっす…ただ、俺がこれからは一緒に乗るっすよ」
行き帰りと一緒に乗ると言うセトに悪いから一人で大丈夫…と断ろうとするも気にしなくていいとにこりと笑う。
そんな笑顔で言われたら逆に断りづらくなって、セトが一日も欠かすことなく月日は流れていった。
「そーいや、最近、どうっすか?」
『んー、大丈夫かなー?
セトがいてくれるから…ありがとうね』
「っ!!い、嫌、俺は大したことはしてないっす」
照れた顔を隠すようにフードを深く被るセト。
だけど、赤面はそれだけでは隠せなくて
それを見て可愛いとクスリと笑うと、更に顔を赤くしてセトははにかむ。
バイト帰りいつものように一緒に帰る道。
その先には市民公園があるのだけれど、夜ということもあり人っ子一人もなく街灯の灯りだけが寂しく遊具を照らしていた。
「…あ、ちょっとお手洗い行ってもいいっすか?」
『うん、待ってるね』
ホントは寄りたくはないのだけれど、アジトまではまだあるし
少しなら大丈夫だろうと近くのベンチで待つことにする。
『…ホントにセトには助けてもらってばかりだな…セトが一緒に乗ってくれてから諦めてくれたみたいだし…今日でバイト始めて…5ヶ月か…もっと頑張んなくちゃ……』
あれ?なんで…痴漢の被害にあってから2ヶ月たってるとわかったんだろう…
『バイト始めたのは5ヶ月前。あの嫌な視線を感じ始めたのは確か…2ヶ月後のこと…それから…そのまま痴漢にあってたのは2ヶ月くらいで…いつから痴漢にあったかなんて話してない…それにここ一ヶ月…セトと一緒に行動してからピタリと視線を感じなくなった…』
偶然?…考えすぎ?それとも…