第3章 正しいと思う方を
やがてエルヴィンが手綱を引き、馬をとめた。
つられて止まると、アリアたちの進んでいた方向に1体の巨人が切り刻まれて死んでいた。そのそばには1人の男が項垂れている。
地面には大量の死体。
あの巨人によるものだろう。
エルヴィンは馬から降りて男に近づいた。
その男が顔を上げ、ようやくアリアはそれがだれなのかを理解した。
「……リヴァイ、さん」
リヴァイはなにかを堪えるように口を閉じていた。頬には涙が伝っている。
エルヴィンがリヴァイに近づいていく。
その足音に気づき、リヴァイは鋭い目でエルヴィンを睨みつけた。
「……アリア」
馬から降りて地面に転がる遺体を一つ一つ確認していたナスヴェッターがアリアの腕を揺すった。
アリアはナスヴェッターを見下ろす。
「どうしました?」
「…………この人、アリアの友だち、じゃなかったか?」
ナスヴェッターの視線を追い、それを見た瞬間、アリアはシン、と頭の片隅が冷えていくのを感じた。
いったい、何人奪っていけば気が済むのだろうか。
神様とやらは、いったい、なぜこんなにも奪っていくのだろうか。
地面に立ち、泥に膝をついたアリアはそれを両手で持ち上げた。
初めて持つそれはずっしりと重く、すでに冷たい。
「…………イザベル」
それは、イザベルの頭だった。
頬についた血と泥を拭い、大きく見開かれた両目をそっと閉じる。乱れた髪も整えて、少しでも乾いているところにイザベルを置いた。
ナスヴェッターに手を貸してもらい立ち上がったアリアは、エルヴィンとリヴァイを見た。
リヴァイとなにか話していたらしいエルヴィンは馬に乗り、アリアたちのほうへ歩いてくる。
1人残されたリヴァイは、呆然と座り込んでいた。
それを見て、アリアの体は勝手に動いていた。
「……あの」