第17章 殺したくてたまらないという顔
マントが音を立ててはためく。アンカーを刺し、ガスを蒸し、巻き取る。そしてまた刺す。考えなくとも体は勝手に動き、重心移動を行う。あれほど揺れていた心が静まっていくのがわかる。
壁の周りに集まる巨人たちが兵士の存在に気づいて手を伸ばした。
だが、それよりも速く彼らは飛ぶ。指をすり抜け。開かれた口をかわし、股の間を通る。全員が壁内を目指す。
前方を滑るように飛ぶリヴァイを追いかけ、アリアは背中に光を背負っていた。
「壁を登るぞ!」
壁が目の前に迫ってきたとき、リヴァイが声を張り上げた。
一瞬だけ、アリアの視界に破壊された壁の門が見えた。伝達の通り、蹴り壊されたらしい穴にはしっかりと蓋がされていた。
いったい、誰がどうやって?
あんなにも大きな岩をまだ巨人の残る場所で運ぶなんて不可能だ。
とにかく、一刻も早く壁内へ入らなければ。そうすればきっと何が起こったかわかるはずだ。
アンカーを壁へ。
兵士たちは一斉に垂直に飛び上がった。
アリアは空から壁の中を見下ろしていた。
かつてのシガンシナ区と同じように、降ってきた門の破片によって家は潰れ、巨人が我が物顔で闊歩している。巨人討伐が行われているのか至る所で蒸気が上がっていた。
この絶望的な中にアルミンがいるのだと思うと、心臓を握りつぶされたような気分になった。
壁上に着地し、リヴァイの元へ駆け寄る。
「兵長」
「全員いるな」
リヴァイはアリア、グンタ、エルドの顔を見回し、一つ頷いた。
「エルヴィンの指示通り、とにかく今は壁内にいる巨人共の掃討だ。ほかの班の奴らとも連携をして──」
「……アルミン?」
ふと下へ視線を巡らせたアリアは小さな声でつぶやいた。
破壊された門の内側に何かがいる。
土煙が立ち上り、よく見えないが確かにそこにいる。
巨人? 巨人だ。大きな体がもたれかかるようにして座り、その肩の上に複数の人が、
「アルミン!」
そこに見えた、金色の髪にアリアは叫んでいた。