第16章 忌まわしき日
二人は不安そうな顔でリヴァイを見上げていた。
一瞬、こちらに助けを求めるように視線が動いたが、アリアは微笑むだけで何も言わなかった。
周りで同じように食事をしていた他の兵士たちがアリアたちを見てざわめく。相変わらずその無愛想な顔つきで恐れられているリヴァイが、明らかに怯えている兵士の前に立っているのだ。そりゃあ何があったんだと騒がしくなるに決まっている。
アリアは心の中で苦笑しながらリヴァイを見た。
「特別作戦班のリヴァイだ」
「は、はい! 存じております!」
「お、お噂は、かねがね!」
妙に堅苦しい返事にリヴァイは不思議そうにアリアを振り返った。
ペトラたちの気持ちもわかる。
いきなりリヴァイ兵士長に話しかけられたらこんな反応にもなるだろう。
「昼食後、俺の執務室に来い。話がある」
「へ、」
「は、なし、?」
「以上だ」
リヴァイの言葉はどこまでも端的だった。
伝えるべきことを伝えると、彼はくるりと二人に背を向けて歩き出した。
「じゃあ、執務室で待ってるね」
急ぐ必要はないからね、と言い置き、アリアもリヴァイの後を追った。
ぽつんと残された二人は顔を見合わせ、恐怖で震えることしかできなかった。もちろん、もう食事は喉を通らない。