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雨上がりの空をあなたと〈進撃の巨人〉

第16章 忌まわしき日



 返された書類を一瞥したリヴァイは、残った紅茶をひと息に飲み干して立ち上がった。


「そうと決まれば話をしに行くぞ」

「……えっ、今からですか!?」

「あぁ」


 ドアのほうにツカツカと歩いていくリヴァイを追いかけるため、アリアも紅茶を飲み干し、余った焼き菓子をひとつ口に放り込んだ。


「この時間なら食堂か」

「そう、ですね。お昼ご飯食べてるはずです」


 時刻は昼過ぎ。
 午前の訓練や座学を終えた兵士たちは皆昼食を食べに食堂に集まる。ペトラとオルオも例外ではないだろう。


「しかし、兵長。エルドとグンタに話を通さなくてもいいんですか?」


 リヴァイの隣に並んだアリアは聞いた。
 リヴァイはちらりとアリアの顔を見ると軽く頷く。


「お前が反対しないのなら、あの二人も反対はしない。あいつらはアリアを慕っているからな」

「それはそう、なのですが……」


 元々アリアもリヴァイが選んだのなら、その人選に口を挟む気はなかった。あのリヴァイが認めた兵士だ。よほどのことがない限り、アリアがなにかを言う必要はない。

 しかし、ある日突然新たなメンバーが班に加わるとなると多少の驚きはあるだろう。


「俺はお前を信用し、信頼している。あいつらも同じだ」


 アリアは思わず背筋を正した。
 リヴァイから兵士として褒められることは滅多になかった。だからこそ、頬が緩むのを必死にこらえる。


「そ、そこまで言ってくださるのなら、わたしもこれ以上なにか言うつもりはありません」


 思えばもう5年も共にいるのだ。
 その年月はたしかに信用と信頼を築くには十分な時間だった。

 アリアは照れ隠しをするように視線を窓へ動かした。

 どこまでも突き抜けていきそうな、冬の空が広がっていた。


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