第16章 忌まわしき日
アルミンから最近のことを知らせる手紙が届いたのは12月になったころだった。
ペーパーナイフで封を切り、そっと便箋を取り出す。アリアはしばらく無言で手紙を読んでいた。
訓練兵団に入団してからもうすぐ3年。今度の春には卒団し、所属兵団を決める。意思は変わらず、調査兵団に入団するつもりだ、と書いてあった。
幼いころから整った文章を書く子だと思っていたが、ここ数年でさらに知的な文体になっている。もう15歳。アリアの後ろを泣きながらついてきた弟がすっかり立派になったものだ。
アリアは微笑み、先日買ってきたレターセットを机の引き出しから取り出した。ペンの蓋を開けて便箋と向き合う。
* * *
「アリア」
ポストに手紙を投函し、兵舎に戻ってきたアリアに声をかけたのはリヴァイだった。
「兵長」
敬礼をして姿勢を正す。
外の寒さで赤くなっているであろう鼻を啜ると、リヴァイはかすかに微笑んだ。
「外に出てたのか」
「はい。弟へ手紙を出しに。この春には調査兵団に入団する、と」
リヴァイは一瞬黙る。おそらくアルミンのことを思い出しているのだろう。
「ガキの成長は早ぇな」
「まったくです。ほんのちょっと前まで小さかったのに」
寂しさももちろんあるが、それ以上に15歳まで健やかに育ってくれてよかったという気持ちもある。
つまるところ、アルミンが元気にいてくれているのならあとのことはなんだっていいのだ。
「それで、どうかされたんですか?」
さっきの呼びかけは何か用事があるときの呼びかけだった。
アリアが聞くと、リヴァイは頷いてついてくるように言った。
「立ち話もなんだ。執務室に行くぞ」