第13章 呆れるほどおめでたい世界
アリアは秋が好きだった。
アリアの好物はさつまいもだ。秋になるとさつまいもが美味しくなる。それにかぼちゃも。食欲の秋とかなんとか言うし、この時期ばかりはどれだけ食べても構わない。
幼いころから秋はそんな季節だった。
「ほ、ほんとにいいんですか?」
アリアと向き合うようにして座るオルオが目の前に置かれたケーキとアリアの顔を見比べて言った。
アリアは笑って頷く。
「もちろん! 二人とも遠慮せずに食べてね」
オルオの隣にはペトラが座っていて、彼女はすでにケーキを頬張っている。
次の壁外調査が2日後に控えたある日、アリアはペトラとオルオを連れて麓の喫茶店に来ていた。
以前に「訓練を頑張ったご褒美に」とケーキを一緒に食べに行く約束をしていたのだが、それがようやく叶った。
しかしアリアは怪我の後遺症により、それほど食事ができなくなっていた。二人と同じものを食べることはできないが、それでもとても美味しそうに食べる彼らを見ていると不思議とアリアの腹は満たされた。
「この前の壁外調査でも巨人を討伐したんだってね。ミケ分隊長が褒めてたよ」
「えへへ、ありがとうございます!」
「俺なんて1日で3体も殺したんですよ!」
「そのうちの2体は私がいなかったら危なかったでしょ」
「は、はぁ?? 俺一人でも十分だったんだがな! まぁ? お前にも? 手柄を持たせてやろうと思って、」
「はいはい」
相変わらずなやり取りにアリアは思わず笑う。
何度も壁外調査を重ねた彼らは初めて会ったときとは比べ物にならないほど逞しくなっていた。もう、あのころのように巨人に襲われて粗相をすることもないだろう。
アイスティーに手を伸ばし、一口飲む。
「次の壁外調査も頑張ろうね」
アリアの言葉に二人は顔を上げ、真剣な表情で頷いた。
「はい!」