第11章 生まれてきてくれてありがとう
青い瞳が見開かれる。みるみるうちに涙がたまり、音もなくこぼれ落ちた。
「泣くな、アリア」
「そんな、こと、言われても」
顔をくしゃくしゃにしてアリアは泣いた。
涙を拭おうにも、リヴァイがしっかりと手を握りしめているからできない。
「本当にそう思っているんだ。お前に会えなきゃ俺はずっと空っぽのまま生きていただろう。だから、」
両手をすくい上げ、唇を落とす。
「ありがとう」
俺と出会ってくれて。
俺を愛してくれて。
今日まで、生きてくれて。
アリアはしゃくりあげながら何度も首を横に振った。
「あなたが……あなたが、わたしを生かしてくれたんです」
大切な人たちを失い、死のうとしたアリアを救ってくれたのはリヴァイだった。湖から引き上げて生きる意味をくれた。あの夜があったから、今のアリアは生きている。
「俺のために生きてくれって言ってくれたから、だから、わたしはまた、生きようと思えたんです」
それがどれだけ辛い道であったとしても、隣にこの人がいてくれるなら生きていこうと思ったのだ。弟のためではない。他の誰でもない彼のために。そして、彼と未来を歩む自分のために。
リヴァイは微笑んだ。
「なら、お互い様だな」
アリアも涙を流しながら笑った。
「わたしはあなたのおかげで」
「俺はお前のおかげで」
こうして歩くことができている。
ふたりは顔を見合わせ、声を出して笑った。
とある冬の、寒い朝のことだった。