第11章 生まれてきてくれてありがとう
全身から汗が噴き出していた。深い呼吸を繰り返し、肺に酸素を送る。束ねた髪は顔に垂れ、それを無造作に後ろへ流す。
「今日はここまでにしようか」
先生の声に頷き、アリアは脱力した。座っていた椅子の背もたれにもたれかかる。息が整うまでにしばらくの時間が必要だった。
「うん、順調だよ。この調子でいけばあと1週間くらいで元の生活ができるはずだ。訓練も再開できるだろう」
タオルで汗を拭うアリアに先生は言葉を続ける。
アリアが大怪我を負ったあの壁外調査からもう1ヶ月が経とうとしていた。折れた骨も無事にくっつき、今は必死にリハビリを行なっていた。本当は早く訓練に戻りたいところだが、焦ってしまったら今までのリハビリが無駄になってしまう。
しかし、もうすぐこのリハビリも終わる。そのことがとても嬉しかった。
「でも無理は禁物だ。わかってるね?」
「もちろんです、先生」
釘を刺すような言葉に、アリアは苦笑した。どうも先生はアリアが黙って医務室を抜け出したことをまだ根に持っているらしい。
「それじゃあ今日のリハビリはこれで終わり。シャワーを浴びてきなさい」
「はい」
着替えと新しいタオルを持たせてもらい、アリアは椅子から立ち上がった。