第7章 愛情は生きている
アリアの髪は柔らかい。
日に当たると美しく輝き、手入れをきちんとしているのかいつもサラサラだ。
「せめて髪の毛くらいは綺麗にしておきたいじゃないですか」
鏡の前に座り、そわそわとするアリアは照れくさそうに笑った。
あっという間に一週間は過ぎ、ついに貴族の方々のパーティの日になってしまった。
アリアの髪のセットとドレスへの着替えの手伝いを名乗り出たカミラは、ゆるむ彼女の瞳を見て心がズキンと痛むのを感じた。
誰のために綺麗にしているの? と聞けたらどれだけいいか。その答えにカミラはまた傷ついてしまうのだろうが。
(……分かってたことだろう)
沈みかけた表情をグッと上向きにする。
鏡越しにカミラはアリアに微笑みかけた。
「今からもっと可愛くしてあげるから」
「楽しみです!」
そう畏まる必要はないとエルヴィンは言っていたが、アリアは緊張しているようだった。それでもワクワクがあるのだろう。さっきから声が明るい。
「すごく器用なんですね、カミラさんって」
手際よく手をすすめるカミラを見て、アリアは感心したように言った。
「あたしは可愛いものが好きだから。小さい頃から姉の髪を使って遊んでたんだよ」
「ご自分で伸ばそうとは思わなかったんですか?」
「長い髪はそもそもあたしには似合わない」
「やってみたんですか?」
「本当にひどかったよ」
思い出しただけでやつれるレベルでひどかった。黒歴史だ。
カミラは思わずぶるりと震えた。
アリアの髪に集中する。
左側の毛束を残し、残った髪はゴムで結んでから三つ編みにしていく。団子を作る要領でまとめ、余った毛束を再び三つ編みだ。あとはこれを団子の下側に巻き込むようにしてピンで留めれば──
「はい、完成」
「うわぁ!」
カミラの持つ鏡で後ろを確認したアリアは歓声を上げた。
あとは花飾りを散らせば、シンプルだが華やかな髪型の誕生だ。我ながら素晴らしい出来にカミラはニッコリ笑った。
「さ、あとはドレスだよ!」
「よろしくお願いします!」