第6章 お前が雨に怯えるのなら
「お前を調査兵団兵士長として任命する」
秋晴れが眩しい昼下がりだった。
団長室に集められた特別作戦班の面々は、エルヴィンの前に立ち、辞令書をもらうリヴァイを見つめていた。
先の壁外調査で特別作戦班は計20体以上の巨人を討伐した。その成果が認められ、リヴァイは兵士長に、特別作戦班は正式な班へと昇格したのだった。
リヴァイはいつもの仏頂面で辞令書とエルヴィンを交互に見て、後ろにいるアリアたちを振り返る。
「これからよろしく頼む」
なんとも言い難い表情のリヴァイに真っ先に笑ったのはエルマーだった。つられてカミラとアリアが「くふっ、」とこらえきれず鼻を鳴らした。ナスヴェッターだけがおろおろと困ったようにしていた。
笑われたリヴァイはなぜ笑われたのかわかっていないらしい。眉間にシワを寄せた。
「なにが面白い」
「だ、だって、くふふ、なんつー顔してんだよ、お前」
「ほんとにね。もっとしゃきっとしてくださいよ〜リヴァイ兵士長!」
「よっ! リヴァイ兵士長!」
「こ、こちらこそ、よろしくお願いします」
四者四様の反応の中、微笑んでいたエルヴィンが「そういえば」と口を開いた。全員口を閉じ、なんだなんだとエルヴィンを見る。
「リヴァイ、アリア。来週の週末は予定を空けておいてくれ」
「そのつもりだ」
「……え? どうしてですか?」
当然のように頷くリヴァイ。何の話かわからず、アリアは首を傾げた。
「貴族の方々が新たな兵士長と選ばれし精鋭に会いたいそうだ」
「…………え??」
助けを求めてエルマーたちを見るが、エルマーとカミラはにっこりと笑い、ナスヴェッターは申し訳なさそうに目を閉じていた。
「みなさんは来ないんですか?」
「俺はそういうの柄じゃねぇし」
「あたしはアリアを飾りつける係だから」
「ぼ、僕は絶対無理だよ」
「と、いうわけだ」
呆然とするアリアの肩に手を置く。振り仰げば、エルヴィンは端正な顔に惚れ惚れするような笑顔を浮かべていた。
あぁ、なんと胡散臭いことか。
「頼むよ、アリア」
団長からの頼みを断れる兵士がいようか。
へへ、と口の端を上げた。