第4章 自分の大切な人を心配させないように
──3ヶ月後。
「みなさん、ご武運を」
アリアはハンジ、リヴァイ、エルヴィン、ナスヴェッターの顔を見渡し、言った。
あと数分で門が開く。馬に乗った4人は同時に頷いた。
2人だけになってしまったエルヴィンの分隊とどの班にも所属していないリヴァイはハンジの班と合体することとなった。
そわそわと落ち着かないアリアに、エルヴィンが微笑んだ。
「ちゃんと怪我の治療に専念するように」
「は、はい! もちろんです!」
もしかしたらちょっとは体を動かせるかもしれない、と考えていたアリアはエルヴィンの言葉に慌てて背を伸ばす。
「ハンジさんも無茶だけはしないでくださいね」
「わかってるよ、アリア」
巨人の捕獲を今回の壁外調査の目標としていたハンジだったが、キースからの許可が下りず、どこか落ち込んでいるようにも見える。
「ナスヴェッターさんも、どうか自分の命を投げ打つことだけはしないでください!」
「う、うん、もう、大丈夫だよ」
ナスヴェッターは口角を上げた。わずかに見える目は、迷いなく澄んでいた。
「アリア」
リヴァイがアリアの名を呼ぶ。
「開門、60秒前!」
先頭からキースの声が轟いた。
ちらりとそちらを気にするような素振りを見せたあと、リヴァイはアリアを見下ろした。
「壁外調査から帰ってきたら行くぞ」
麓の紅茶屋へ。
アリアはぱぁっと顔を明るくさせた。
3ヶ月前のことを覚えていてくれたことと、リヴァイとお出かけができる嬉しさでアリア今にも飛び立ちそうだった。
「はい! 楽しみに待ってます」
「30秒前!!」
不意に手が伸びて、リヴァイはアリアの頭を軽く撫でた。
「行ってくる」
「……お気をつけて」
アリアは表情を引き締め、敬礼する。
列に背を向け、野次馬に来ている人々の群れに混ざった。
「第24回、壁外調査を行う!」
前進せよ。
人類の自由を目指し。