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崩れる花

第2章 水の中


一生懸命手入れしてた、長い紙をバサッリ切り、軽やかな気持ちになる。

半分自暴自棄になっているのがわかる。

くるりくるりと楽しそうに一人で回る。

「あっ・・・・。」

最近ほとんど食事をしていなかったからか、貧血でふらつく。

柱に寄りかかり、ズルズルと座り込む。

なんとか柱に捕まり立ち上がろうとする。
が、視界が霞、思うように力も入らない。

「大丈夫ですか?」

男性にしては少し高く、凛とした声が聞こえた。

誰かに見られていたのだ、恥ずかしいと思いながらゆっくり言葉を紡ぐ。

「ええ、大丈夫です・・。少し休めば良くなりますから・・。」

かすれるような声で自分でも驚く。
こんなにも弱った姿を誰かに見せたことはないと、最後の力をふり絞り立ち上がり、微笑む。

ふらつくより前に、腰のあたりを支えられる。

これほど誰かと近くに、特に男性と密着したことはない。

「大丈夫には見えません、部屋までお送りします。」

部屋には戻りたくない、放って置いてくれたらいいのに。

「いいえ、結構です。お放しください。」

このままやりとりを続けていたら意識を手放してしまうかもしれない。

「そういうわけにはいきません。では、休憩室に行きましょうか?」

誰にも見られたくないのに、構わないでほしい。
いつも誰からも無視されていたというのに。
どうして放って置いて欲しい時だけこうなるのだろう。

「いいえ、いいえ、どこにも行きたくありません。」

あの日、涙をこぼしてから、感情が抑えられなくなって来た。
こんな初対面の人に涙など見せられない。

「失礼します。」

ラチがあかないと抱きかかえられる。
抵抗する力はなく、すんなりと持ち上げられる。

「おやめください・・・。」

抵抗する声は空気に消えていく。
このまま、私が消えたことがバレたら、彼はもっと呆れるだろう。
せめて、これ以上嫌われるようなことはしたくない。

「下ろしてください。」

「そんな真っ青な顔をしているというのに、どうしてほっておけると思うんだ?」

彼が語気を強める。

思わず、体が震える。
それでも、抵抗しなければ。

どうして、こんな思いをしなければならないのだろう。
苦しくて、苦しくて、逃げ出したい。

逃げることも私は許されないのだろうか。


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