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崩れる花

第2章 水の中


「イリス様・・。」

「ああ、少し忘れ物をして、その、プレゼントを持って来たんだが、どこにしまったのか覚えているか?」

その優しさをかけらでも彼女に向けてあげたらと、何度思ったことか。

アウローラ様が不憫でならなかった。

「イリス様」

「なんだ、急いでるんだ。一緒に探してくれ。」

「イリス様、先ほどアウローラ様が見えました。」

眉をピクリと動かす。
どうやら機嫌を損ねたようだ。

「後でいいだろ。そんな報告・・。」

「大切なものを預かりましたので・・。」

先ほどアウローラから預かったものをイリスに渡す。

「これは・・・。」

ついに、婚約破棄を受け入れたかと、興奮するのがわかる。

「彼女は?」

「部屋にいると行っていました。」

「わかった。」

そして、プレゼントを見つけると、明るくなった顔で、会場に向かった。

しかし、なんとなく、アウローラが気になり部屋を尋ねる。

が、返事はない。
無断で入る。

「アウローラ?」

なん年ぶりにこの名を呼んだのだろう。
部屋に入ると、彼女らしくなく、ドレスが脱ぎ捨てられ、靴もバラバラに床に落ちていた。

だが、暴れたというほど散らかってはいない。

中に進むと、刃物がキラリと光りぞくっとする。

しかし、血は見えずホッとする。

「アウローラ??」

少しイラつきながら名前を呼ぶ。
しかし、返事はない。

ふと、ゴミ箱に目がいった。
そこには、長く、美しい、彼女の髪の毛が入っていた。
急に恐ろしくなる。

机の上に、昔、適当にあげたブローチがあるのを見つけた。
ヒスイの、よくわからないものだった。
高いだけで、デザインは使いにくく、だが、いつも手に持っていたのを覚えている。

「紙・・・」

ブローチとともに小さな紙が置いてあった。

あなたのことを、愛していましたーーーーー
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