第1章 夕暮れ時
「おはようございます、殿下。イリス様。」
スカートの裾を軽くつまみ、足を一歩引きふわりと優雅に挨拶をする。
「ああ、席につきたまえ。」
にこやかにスカンジナビアの王は挨拶をする。
彼は二人の関係に終わりが来ていることを知らない。
イリスは黙ったまま何も言おうとしない。
「今日も相変わらず美しいな。」
他愛もない話が始まる。
「ありがというございます、お父さま。今日は天気が良く、」
「失礼します」
まだ始まったばかりだというのに、イリスは席を立つ。
「ははは、自分の仕事で手一杯なようだ。すまんな。」
二人の状況を知らない王は呑気だ。
「そうですね、私もできるだけサポートいたしますね。」
彼とは比較的穏やかな時間を過ごせる。
でも、もう限界だった。
早く消えてしまいたくてたまらなかった。
食事の手が止まってしまう。
「どうした?」
「いえ、どうやら食欲がないみたいです・・。」
「そうか、体調は?」
「ご心配をおかけして申し訳ございません。今日は安静にしています。」
「そうか・・。午後から君の妹が来るみたいだがね。」
初耳だった。
「そうでしたね・・。なんとか対応いたしますのでご心配なく」
そしてアウローラも席を立った。
正直弟や妹は可愛い存在だ。
だが、妹はコーディネイターのため、ナチュラルより発達が早い。
可愛らしく愛嬌のある妹とイリス様が一緒にいる姿にどうしても嫉妬してしまう。
実の妹だからと、我慢しているものの、今日は耐えられそうにない。
深いため息をつき、薄緑のドレスに着替えた。
真っ暗な部屋に一人ベットに座っていた。
妹が来たらく、庭に迎えに行くと、抱き合う二人の姿があった。
結婚したら兄になる人だ。
深い意味はないのかもしれないと、何事もないように近ずく。
「君の姉も、あなたのように優しく、慈悲深けれがば・・。国のトップになるには冷たすぎる。」
「でも、お姉さま、すごく綺麗ですし・・。私自信がありません。」
「あなたの方が何倍も魅力的だ・・。どうして、彼女より先に出会いたかった。」
「いけませんわ・・。お姉さまが来たら・・。」
「構わない。彼女には婚約破棄を言い渡した。」
「まぁ!」
そこまでしか聞いていられなかった。
どう部屋に戻ったのか覚えていない。
ポロポロとまた涙が溢れる。