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崩れる花

第3章 ガラスの中の真実


「なぜ、私を助けてくださったのですか?」

「助けたのではありません。あなたにダンスを申し込みたかっただけです。」

それが彼の優しさだとアウローラは感じ、素直に受け入れた。

音楽が奏で始める。
お互いに手を重ね、イザークの方に手を置く。
イザークは彼女の腰に手を当てぐっと引き寄せる。
一気に体が密着する。
恥ずかしくなって、つい目をそらす。
今までなんども男性とダンスをしたことはあるが、熱っぽい視線を向けられたことはない。

「こっちを見て」

彼に耳元で囁かれてさらに俯いてしまう。

簡単なステップから動きの大きなステップに移り変わる。
くるくると連続で女性が回るため、目が回らないようしっかり支えていてあげなければならない。
イザークのリードはうまく、まるで初めてではないような錯覚に陥る。
そして、一番の見せ場。
大きなターン。
大きくドレスが膨らみ、見ていてとても美しい光景になる。
振り付けが大きく、つま先から指先の動きでダンスのうまさが浮き出る。

うまくできるか少しドキドキして、表情がこわばる。
そんなアウローラを見てイザークは笑みを浮かべる。

もう少し・・・。
次・・・!!

「きゃっ!」

思わず小さな悲鳴をあげてしまった。

彼が手を腰に当てターンするのを手助けするはずが、アウローラを持ち上げ一回転したのだ。

そして、空中で手が離れ、アウローラは空中で彼の右手をとる。
無様に落ちるわけにわいかない。
音も立てずにまるで羽があるかのようにふわりと嫡子する。
そして、その流れのままくるりと一回転する。
周りの者達はその珍しい演出と優雅さに驚き、踊りを忘れているものもいた。
離れた右手をもう一度差し出す。
イザークはその手を取り、優しく引き寄せる。

「緊張が解けたようですね。」

イザークが微笑むが、アウローラはじっと彼の瞳を見つめるだけだった。
何か言われると思ったが、想像と違う反応をされ、動揺する。

その後も彼女はイザークの瞳を見つめ続けた。
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