第3章 ガラスの中の真実
彼女の婚約者が入場するアナウンスが響き渡り、ホールの中心に目を向ける。
叶わぬ恋をしたものだと、自分でも呆れる。
しかし、スカンジナビア王太子の隣にいるのは彼女ではなかった。
ホール内がざわつくのを感じる。
あからさまにいるものはいないが、皆横目でチラチラとだれかを探している。
その先を辿ると、堂々と佇む彼女がいた。
「皆!聞いて欲しい!!私はアウローラとの婚約を解消した。私は真実の愛を見つけたのだ!!政略結婚ではない!私は愛する人と生きて行きたいと思う!この後のはじめのダンスではぜひ我々と踊ってはくれないだろうか!愛する人とともに!!」
婚姻統制があったプラント。
強制ではななったが、仕組みは残っている。
子供を取るか、愛を取るか。
王太子の呼びかけは意外にも人々の心に刺さった。
そして、元婚約を見てクスクス笑うものが多くいた。
彼女の表情は変わらないが、グラスを持つ手がわずかに震えていた。
入場が終わり、ダンスを踊るために、ホールの中心に集まりだす。
男女が楽しそうに歩いていく中、彼女の周りにはタチの悪い男が集まり始めていた。
お互いに誰がいくべきがニヤニヤしながら、肘を突き合う。
なぜこんな辱めを受けなければならないのだろう。
愛?私はちゃんと愛していた。
私は政治的な意味しかなかったとレッテルを貼られた。
だが、もう苦しむのは今日までなのだ。
今日を我慢すれば私は自由。
だから、どんな仕打ちでも我慢できる。
「すみません。ジョン・ホワイトと申します。ご一曲いかがですか?」
明らかに今考えた適当な名前。
ニヤニヤと歪んだ笑顔。
彼の腕が私の手を取ろうと伸びてくる。
「お久しぶりです。一曲踊っていただけませんか?」
正装に着替えたイザークは優雅に彼女の手を取り、口づけするふりをする。
「おい!俺が先だぞ!」
恥をかかされたと、ジョンと名乗った男が抗議してくる。
「では彼女に決めてもらいましょう。」
イザークは余裕な笑みを浮かべながら提案する。
「私は・・・。」
迷わずイザークの手を取る。
彼は優しく微笑むと、彼女をだきよた。
「ということだ。お前たちは他のパートナーを探すんだな。」
余裕たっぷりに笑うと、アウローラを連れ出した。