第3章 ガラスの中の真実
部屋に戻った後、陛下から呼び出された。
「お呼びでしょうか?」
「ああ、こちらに来なさい。」
言われた通りに向かい合って座る。
「これは・・・。お母様・・・・?」
「そうだ。」
「なぜ、お母様の写真が??」
陛下は目を固くつぶったまま何も言わない。
何も言えず、母の写真を眺める。
「実に綺麗な女性だった。」
何かを必死に堪えるように、細かく唇が震えている。
「陛下・・・。」
「すまない。私が招いた不幸だ。改めて謝ろう。すまなかった。」
深々と頭を下げられる。
「頭を上げてください。話が見えません。」
「先代の皇后の子だ。死産で子供ともどもなくなったことになっている。」
「亡くなっているとは?」
「子供が低体重で生まれて、助かるかどうかわからなくて公表されなかった。そして、父は冷徹な人だった。子供はそのまま病院で放置された。そして後妻として入った私の母の家が彼女の世話をしていたらしい。姉の存在を知らぬまま私が26になった時、あいつが生まれた。そしてその後アウローラも生まれた。一度君が生まれた時に顔を見に行ったのだよ。君の父とは友人だったからね。」
遠い記憶を紐解いて行くようにゆっくりと紡がれる。
「そこで出会った。皇后の肖像画そっくりの美しい人がいた。なぜかそこで思ったのだ。あの人の娘だと。調査すれば腹違いの姉打倒ことがすぐにわかった。だから婚約者にしたのだ。彼女が歩むはずだった幸せな道を、君で償わせてもらおうと。」
目の前が真っ暗になって行く。
誰も悪くないのに、世界が憎い。
苦しい。
「すまなかった。素性を知らない君の父は彼女を雑に扱ったみたいだ。」
「でも、母は・・・。生活苦で父の元へ行ったと・・・。」
「君についた嘘だろう。自分の立場が危うくなると、君の兄弟の母親が言いふらしたのだろう。」
「父は、知っているのですか?」
「いいや、知らない。ちょうどいい人がいると私の母の兄弟が紹介したらしい。厄介払いだったのだろう。」
勢いよく立ち上がる。
「なぜ、お母様を助けてくださらなかったのですか?」
「知らなかったんだ。そんな扱いを受けているなんて。」
少し声が荒くなる。
「すまない、償いたかったんだ。婚約は解消しても良い。我が息子が迷惑をかけた。」