第3章 ガラスの中の真実
「それにお前は、俺に近づいてくる女性を意地汚く罵ったそうだな。」
「そんなことをしていません!彼女たちが私を侮辱したからです。言われっぱなしにしろと?」
「毎日ひどいことをされたと訴えきてたのは?彼女らが嘘をついてきたと?」
「私が嘘をついているとでも・・・?私はいつも悪者ですか・・?」
「・・・・。金輪際俺たちに関わるな!父上にもだ!ああ、オーブから帰ったらあなたの居場所はないからな。あなたの実家にも話を通してある。」
そう捨て台詞を吐いてホールへと戻っていく。
もともと実家に居場所はない。
オーブから帰ったらどうしようか、やはり母の元へ・・。
「♪〜♪♪〜」
母とのたった一つの思い出。
小さく口ずさむ。
優しすぎた母は争いごとが嫌いだった。
だからこそ、あの厳しく独特な世界で生きられなかった。
ホールには戻りたくなかった。
2回くらいの高さであればと、バルコニーの手すりに立つ。
下は芝生だ。
身体能力には自信がある。
裾を持ち上げひらりと舞い降りる。
まるで重力がないかのように音も立たずに降りる。
今日は満月だ。
「綺麗・・・・。」
「・・・・・。いつも出会いますね。」
男の声に振り向く。
「イザーク様・・・・。」
「何かと縁があるようですね。」
会場から音楽が流れ出す。
「なぜ裸足なのですか?」
「あ、」
バルコニーから飛び降りる時脱いだのだ。
「その、バルコニーから降りる時に脱いだのです。」
「知っています。こう言っては失礼ですが、ナチュラルでありながらあの身のこなしは素晴らしいと思います。まるで女神が舞い降りたかのような優雅さと神秘さでしたよ。」
「な!!」
よくそんな恥ずかしいことが言えたものだ。
全身から火が吹き出しそうなほど恥ずかしい。
よく見ると少し頰が赤い。
「コーディネーターの方は酔わないと聞きましたが、どうやら酔っているみたいですね。」
「酔わないわけではありません、酔いにくいだけですから。」
だから機嫌がいいのだろうか。
普段はこんなことを言うような人ではないだろうに。
「お水をお持ちいたしましょうか?」
「いいえ、お気遣いなく。では、良い夢を。」
手の甲にキスをするような仕草をする。
そして彼は会場へ向かって行った。