第3章 ガラスの中の真実
「あ、失礼いたしました!」
作法など関係なく、ぺこりと頭を下げる。
だが、誰もが許してしまう愛らしさがある。
薄い黄色のドレス。
スカート部分にビーズが縫い付けられ、光に当たるたびキラキラする。
チュチュをたくさん重ねてあるため、動くたびふわりふわりと動く。
「アンネ・・・!」
1オクターブ上がった甘ったるい声で妹を呼ぶ。
私のことをそんな風に呼んでくれたことないのに。
「ごめんなさい、イリス様を追いかけて来たのですが、お姉さまと一緒だったとは、ごめんなさい!!」
もう一度ぺこりと頭を下げる。
恋敵であったというのに憎めない。
「待つんだ、アンネ・・・。邪魔ではない。だが、少し待っててくれるかい?」
綺麗なオレンジ色の髪の毛を優しく撫でる。
「もちろんです・・・」
まだあどけないが時々大人の顔をする。
「ああ、また後で・・・。」
軽くおでこにキスすると、ホールに送り返す。
一つ咳払いをしてこちらに向き直る。
「父上の元に行ったのはなぜだ?何か企んでいるんだろ?」
「何も企んでおりません。陛下がおそばにと呼ぶのです。」
十分な距離を取る。
「王妃の座がなくなって何か不都合があるんだろ。」
「ありません!!もうよろしいではないですか!!あなたのいうとおり、婚約破棄したではありませんか!」
感情が溢れ出す。
なぜこの呪縛から解き放してくれないのだろうか。
「どうして・・。何がいけないのですか?私が何をしたというのですが!?どうしたら解放してくださるのですか?」
「そうやって!!いつもいつも俺を惨めにさせるんだな!」
彼の大声に体がこわばる。
「いつもいつも!父上に大事にされて!!いつもお前を頼る!そして!俺に怒られようがそうでなかろうが何事もなかったかのように済まして!俺がいくら頑張ってもできないこともひょうひょうとやって!いつも惨めだ!」
「な、、」
初めて聞く彼の思いだった。
「なぜ・・。なぜ今更おっしゃるのですか!私は!あなた様のために、ずっと、ずっと努力して来ました・・!!」
彼の前でみっともない姿を見せてはいけないと思っていた。
そのために何でも努力して来たのだ。
その結果彼に嫌われる要素になるとは思いもしなかった。