第5章 歌舞伎町バニック
「すみません!人を探してるのですが!」
そういって息を切らして走ってきたのは
お兄ちゃんと、一二三さんだった。
「お、お兄ちゃん!?」
そう答えると、お巡りさんは見つかったようですねと笑顔で手続きを進めて私たち全員を交番から解放した。
「やっぱり、新宿の神宮寺の連れか…。」
そう言ってるおじさんは、お兄ちゃんのことを知ってるみたいだ。
恐る恐るお兄ちゃんを見ると、笑顔で
「妹がお世話になりました。」
と、伝えて私の手を引っ張りそのおじさんから離した。
そして、いちばんびっくりしたのは一二三さんがスーツの上着を脱いで私に近づいてきた。
「ひ、一二三さん!スーツ!」
その上着を私にかけて、寒くなかったかい?
そう聞いてきた。
やっぱり手は震えている。
「私はいいです!
私に気をかけないでスーツ着てください!」
そう言うと、一二三さんではなくお兄ちゃんが
「これだけ、大変な騒ぎを起こして
まだ自分を大事にしませんか?!
一二三くんや私やお店の前で待ってる独歩くんの心も少しは考えなさい!」
そう、叱られた。
「瑠璃ちゃん、なんでさ。
心配する人がいるのに拒絶して、家族じゃないなんて言ってしまうんだい。
先生はすごく焦っていた。
走り回って髪の毛がひっつくくらいの汗をかいてさ。
それでも、お巡りさんに言ったみたいに、家族はいないって言える?」
よく見たらお兄ちゃんも一二三さんも、すごく汗をかいてた。
「あのな、嬢ちゃんたちに何があったかは知らねぇけど、嬢ちゃんの話も聞いてやった方がいいとおじさんは思うぜ〜」
そういって、おじさんは「嬢ちゃんも、お転婆は程々になー」って言って去っていった。
すこし、病院に戻って話しましょう。
そう言うお兄ちゃんに私はついて行くしか無かった。