第3章 社会科見学は絶対しない!
次の日も、その次の日も、その金髪は来た。
「いい加減諦めたら?」
読みかけの本はこの間から進んでない。
どうせ裏切るなら初めから信じたくない。
私のブルータスは、存在しない。
「諦めないよ。
ホストはね、悲しい目をした女の子を放っておけないんだ。」
そう言って金髪は点滴で固くなった皮膚を撫でる。
「お兄ちゃんから聞いたよ。
スーツ着てないと女の子ダメなんだってね?
だっさ。」
ぴくりと金髪の眉が動いた気がした。
「たしかに、僕はスーツを着てないと女性とは話せないよ。
それでも、話せる方法を見つけたんだ、それだけでも進んだよ。」
そういって、手を離してドアに向かう。
「君も、なにか人を拒絶する理由があるはずだ。
それを教えてくれるまで、社会科見学をしてくれるまで、僕は通うよ。」
そう言い残して。
コンコン
「はい。」
金髪が帰ったあとは赤髪の社畜が来た。
「こんにちわ。
これ、お口に合えばと思って買ってきました。」
そう言って渡されたのは…プリンだった。
「お兄ちゃんに聞かないと食べれない。」
そう言ってコールを鳴らしてお兄ちゃんを呼ぶ。
「瑠璃さん、どうしました?」
そう言って駆けつけてくれたお兄ちゃんにプリンを見せて、赤髪がくれたことを話す。
「これは、独歩くん
ありがとうございます。
瑠璃さん、せっかくですからひとつだけ食べましょう。
さすがに、それ以上はダメですが」
そう言ってプリンの蓋を開けてくれた。
「これ、食べれるの?」
私はプリンを食べたことがない。
今まで病院食だけだった。
たまに、お兄ちゃんがゼリーやフルーツ缶を買ってきてくれるくらいで、プリンなんて初めて見たに近い。
絵本の中で、知ってるくらいのものだった。
「はい、卵と牛乳を混ぜて砂糖を煮つめたものをかけて冷やしてあるデザートです。」
ひとくちスプーンで口に運ぶと、とても甘かった。
それは、絵本で主人公が表現した甘い、とは似ても似つかぬものだった。
「お兄ちゃん…これとっても甘くて美味しい!」
そういうと二人は私を微笑んで見つめた。