第1章 冬至
ちょっと待ってね~と言いながら
ソファに座る黒尾さんがスマホをさわる。
「あ~~~~~」
「なんですか?」
テーブルを拭く手を止めて
黒尾さんのスマホを覗き込む。
「いや、来年の流星群検索したんだけど
一番見れそうなの夏だって」
「ガーーーン」
「ガーーーン(笑)」
隣の黒尾さんをキッと睨む。
「バカにするのやめてください」
私も私ではあるんだけど
こう言う擬態語が、つい出てくる。
前はなかった。
だけど黒尾さんに慣れてきたのか
つい出てしまうように。
そしてそれを黒尾さんに拾われてはマネされる。
ほんっと、最悪
「おーこるなって!」
そう言いながら後ろから抱き付かれるけど。
「黒尾さん嫌いです」
「そーんな怒るなって!な?」
私の機嫌を取ろうとする。
「ご機嫌取るくらいならマネしないでください!」
「だーってさァ?」
ニヤニヤするのもほんと嫌い!
「お風呂入ってきます!」
「俺も~」
「じゃあどうぞ!」
「え~。名前チャン一緒に入ろ?」
「結構です!」
「えーーーーー」
「………あ、そうだ」
「ん?」
今の今まで怒ってた私が突然寝室に行くもんだから、
少し不思議そうな黒尾さん。
会社のバッグの中から、来年の手帳を取り出す。
「どうしましょう?前日は危険ですよね?
一週間前は早すぎ?三日前くらいがちょうどいいですかね?」
「ん?何が?」
「いや、来年柚子買うの忘れないように
書いておこうかなーと思って」
まだ真っ白な12月のページを見せながら。
「ちょうど週末くらいでいいんじゃない?」
「そうですね。そうしましょう」
「あ、じゃあカボチャも書いといて」
「……………っえ~~~」
「え?なに?」
嫌そうな顔の私に、やっぱり不思議顔。