第1章 冬至
「………カボチャ、あんまり好きじゃないです」
「そうなの?」
「ハイ」
「今まで気づかなかったな~」
「ちなみに食卓には一度も出てきたことはありません」
「そういえば、そうか?
でも、ほら。貸して」
黒尾さんにペンを取り上げられて。
そして私の「柚子を買う!」の文字の下に
「南瓜も」って。
「サラッと書くカボチャが漢字って、
そういう感じなんですね」
「"南"の"瓜"でカボチャ、西の瓜はスイカ、
冬瓜は………
あれは冬か」
「いや、漢字じゃなくて(笑)」
「え?」
「いや、黒尾さんってカボチャを漢字で書くんですねってことです!」
「どういうこと???」
わけわからないという感じの黒尾さん。
「別にいいです!
ささっ!早くお風呂に入りましょう!」
「え、いいの?」
「ん?」
………あ、
私さっきまで怒ってたんだった。
忘れてた。
けど
「何のことですか?入らないなら先に入りますよ?」
もうそのまま忘れたフリを。
突然ご機嫌の私にまたまた不思議そうな黒尾さん。
でも、なんだか
手帳に黒尾さんの字が当たり前に加わったのが
どうしようもなく嬉しかった。
--- end ---
2020.12.21 冬至(に書いたものです!)
2021.7.12