第4章 (その夜のお話)
私の声に鉄朗さんが反応する。
「あ、いや。今日の満月って
ピンクムーンっていうらしいじゃないですか?」
「うん」
「で、そのピンクムーンを見ると
"恋愛運が上がる" "結婚運が上がる"
"恋人ができる" "幸せをもたらす"
っていう言い伝えがあるみたいです。
ますますロマンチックですね」
「最初3つはいらなくない?」
「まぁ、私たちには不要ですかね?
だけど "幸せをもたらす" は、ぜひあやかりたいですね!」
そう言いながら振り向くと
突然唇がふさがれて
「………ふぁっ」
長いキスに、思わず声が漏れる。
「突然そういうの、やめてください………」
「なんで?」
「恥ずかしいじゃないですか!」
「何を今さら」
そう言われるんだけど、
こういう甘い雰囲気は久しぶりで。
久しぶりだと、未だに毎回
鉄朗さん初心者に戻ってしまう私には刺激が強すぎる。
ただ、私の意見は受け入れてもらえるはずもなく
もう一度。
座っていたはずの私の身体は
いつの間にかソファに倒れていて
そして
甘い雰囲気に、
さらにココアの甘さも相まって
甘くてやっぱり、ますます甘い。
糖度は最高潮
鉄朗さんの唇が
耳に、首にと移動する。
「ねぇ場所、移動しましょ?」
これはこのままするんだろうな。という流れ
だからベッドへ、と提案したんだけど。
「今日はこのまま」
手もパジャマの中に伸びてきて
思わず身を捩る。
「いや、でも」
「だーって名前、声我慢するじゃん?」
「え………」
「子供寝てるからって、我慢するじゃん。
ねぇ、久しぶりに名前の声聞きたい。
だから今日はこのまま」