第2章 エイプリルフール
「俺のことなんて気にしないで、
早く帰れるなら早く帰れよ?」
「そうですね~。今日は終電より早く帰れそうですか?」
「うーーーーん。何とも言えないけど
たぶん明日からの方が忙しいから、
今日くらい早く帰りてぇよなァ」
「え、早く帰れる可能性あるんですか?」
「んーーー。でも今日のメイン入社式だし。
何もトラブルなければいけねーかな?とか」
もしもそうなら話が変わる。
「え、じゃあ私も早く帰れるようにします!
だいたいの時間わかったら教えてください」
「了解。名前も目処がついたら連絡して」
「わかりません~!」
「え?」
「エイプリルフール!」
「いや、ちょっ、急に戻りすぎ」
だって
「私もうすぐ出ます!」
「え、もう出るの?にしても早すぎない?」
「終わりの時間気にしなくてもいいならもう少しゆっくりでもいいんですけど、朝から仕事捌いとこうと思って」
本当は、このままのーんびり。
一生黒尾さんと一緒に朝ごはんを食べていたい。
だけど、早めに行っておこう。
本当はもう少しいてもいいんだけど、
だけど黒尾さんの方が先に終わったらイヤだし。
黒尾さんが帰れるかもしれないなら、
会社なんて一刻も早く出たい。
そうと決まったらバタバタと準備を進める。
「スマホ忘れんなよ~?」
黒尾さんは優雅にコーヒーを飲んでいる。
「黒尾さんと一緒に出勤したくないのに!」
「え!」
「一緒に出勤したかったなってことです!」
バタバタと食器を流しに持ってって
………帰ってから洗おう。
「置いといていいよ。洗っとく」
「ほんとですか?最悪!」
それに対しては舌を出されて返事をされた。
おぉ!
今のはちゃんと、いい感じのエイプリルフールだった気がする!
歯を磨いて、黒尾さんに念押しされたスマホもちゃーんとバッグに入れて。
そんな私を玄関まで見送りに来てくれる。
「名前ちゃん?嫌い」
「え?!」
突然なに?
は?え?
「え?!」
「は?!」