第8章 伝えたいよ。
発音のお勉強は、先程までと同じ様にリヴァイの言葉をリピートするものだ。
本は二人で見る。
初めのお話は“シンデレラ”。
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シンデレラの話は世界が違っても変わっていなかった。
自分の世界との共通の物を見つけられたからか、優浬の本を触る手は心なしか優しい。
それを見かねたリヴァイは、目を細める。
人がこんなに優しい表情をするのを、見た事がなかったからだ。
優浬のその顔を見ると、無意識の内にリヴァイは満足した。
一方優浬は、慣れない発音に舌が疲れているが、こちらも満足であった。
たまたまリヴァイが手に取った本、ただの偶然であったのだが、今の優浬にはその1冊との出会いに運命さえ感じていた。
そこでフッと先程の事を思い出す。
シンデレラを音読してくれるリヴァイ。
先程までは気にならなかったが、自分は物凄い状況に居合わせたのではないか。
今思えば、棒読み気味だったかもしれない。
そろっと横目で隣に座るリヴァイを確認する。
この目付きの悪い男が、あのシンデレラを………。
ブフゥッ
「あ”?」
《な、なんでもないですっ》
カッと眉間に最大の皺を寄せ、睨んでくるリヴァイから、必死に顔ごと目を反らし、口を即座に手で抑える。
ついつい日本語が出てしまった。
彼を笑ったらいけない。
リヴァイの目は、人を殺せるものだった。