第8章 伝えたいよ。
そういえば、昔はよく王子様に憧れたものだ。
再びリヴァイを盗み見る。
わかってた。
この人に王子様は似合わない。
見た目だけなら悪役の方が似会ってる。
でもリヴァイさんの場合はカッコイイ悪役だ。
よくいる味方よりも人気のある敵だ。
あれ、じゃあ私は悪役に助けられてるんだ。
この優しい悪役に。
そんな下らない事を考えていると、自然と頬が緩んだ。
「リヴァイしゃん」
「“しゃん”じゃねぇ、“さん”だ。」
「リヴァイ、さん。」
「何だユリ」
ほら、面倒なのに一々間違いを正してくれる。
ちゃんと、私の目を見てくれる。
優浬はスケッチブックに何かを書いてリヴァイに差し出した。
まだ、この言葉の発音は習っていないから、
今は許してね。
“ありがとう”
私の都合上、彼の目が微かに見開いた事は、見間違いじゃない。ということにしておこう。
早く声に出して伝えたいよ。
END.