第8章 伝えたいよ。
リヴァイは本棚から本を1冊取り出すと、優浬の目の前に差し出した。
カタカナに似た文字に目を通すと、
《童話集?》
ついつい馴染みのある題名に母国語が出てしまった。
優浬の反応で知っているものだと理解したリヴァイは、ピクリと片眉を動かした。
「知っているのか」
確認の為に尋ねたが、本人は首を傾げているので質問が伝わっていないと解り、リヴァイは彼女が常に装備しているスケッチブックと鉛筆を引ったくる。
勿論舌打ちのオマケ付きだ。
その際優浬の肩が跳ね上がったが気にしないでおこう。
“知っているか”とリヴァイが書くと、優浬は深く頷いた。
知っているも何も、彼女の世界では逆に知らない人がいる方がおかしい程童話という物語達は人々に昔から愛されていた。
それがまさか別の世界であるこんな所にまであるとは…。
知っている物語の方がやりやすいだろうと考え、リヴァイは“コレで発音練習”と書き、再び優浬に見せた。
優浬はいつも道理はい、と頷いたが、その口角は緩く上を向いている。
優浬は元々童話が好きだ。
やはり女の子なだけあって、特にお姫様や王子様が出る物語が好きだった。
幼い頃は家にあったディズニーのビデオを何回も見たものだ。
成長していく内に童話を読まなくなっていたので、これはいい機会かもしれない。