第1章 1
「ごめ…………っ、緋芽ちゃ…………」
やばい。
終わった。
ずっと我慢してたのに。
出来てたのに。
何もかも、終わった。
ざわつく心臓の音を感じながら、知らずにずっと押さえつけていた両手を離すと。
わずかにそこはキツく掴まれた跡が、残っていて。
知らずに力加減を間違えたことに今更ゾッとする。
「ごめん緋芽ちゃん!!誤ってすむ話じゃないけどほんと俺…………っ」
緋芽ちゃん。
こっち見ない。
「…………っ」
ああほんと。
終わった。
もう、俺の顔なんて見たくない、かな。
「ごめん、ね。もう、近付かないから」
緋芽ちゃんをお姉ちゃんと思ったことは記憶上たぶん一度もない。
いつも当たり前にそばにいて。
恐怖の対象でしかない古くて無駄に広い家の中、ずっと隣にいたのは緋芽ちゃんだけだった。
無邪気に笑いかけてくる眩しい笑顔も。
人一倍努力家なところも。
ほんとは泣き虫で甘えん坊なところも。
全部愛おしくて。
ただ。
そばにいられるだけで良かったのに。
隣で見ていられる、だけで。
「…………っ」
なんて。
誰がそんなこと思うか。
好きなら。
全て暴いて啼かせたい。
最奥までぐちゃぐちゃに突き上げて、よがらせて喘がせて。
トロトロのぐちゃぐちゃに。
————あー。
駄目だ。
もう。
だってどうせ嫌われたなら。
もうそばにいられないならいっそ。
「緋芽ちゃ…………っ!!」
どうせならとことん犯して、めちゃくちゃにして。
とことん嫌われてやろう。
って。
意を決して壁を向いたまま小さく蹲る緋芽ちゃんの肩を引き寄せた。