第2章 2
あたし今、皇にキスされてる。
やっと意識と脳が繋がったのは、どのくらい後だったか。
気付けば布団は剥がされ、夜着のボタンは全て外されてた。
ゆっくりとその様子を目で追っていれば。
顔をあげた皇と、視線が絡む。
「…………嫌?」
首を傾げて不安そうに目も声も震わせてそう訊ねる皇は、やっぱりいつものどことなく頼りない皇とも重なって。
頭が、バグを起こす。
「…………嫌、じゃ、ない」
きっとそうだ。
小さなバクが膨らんで。
わけわかんなくなってただけ。
だってじゃなきゃ。
実の弟を、まして同じ顔した弟を。
こんなに欲しがるなんておかしい。
「緋芽ちゃん、好き」
皇の言葉がこんなに嬉しいのも。
きっとDNAが誤作動起こしてるだけ。
そんなどーでもいい言い訳を考えながら。
この日あたしたちは。
初めての過ちを、犯したんだ。
「ま、待って皇…………っ」
再びさっきみたいなキスが、降ってきて。
皇の手が直接、胸へと触れた。
「お願い緋芽ちゃん、緋芽ちゃんに触りたい。それにさっきいやじゃないって言ったよね?」
「でも…………」
嫌じゃない。
あたしも皇が、欲しい。
本心。
本心だよ。
でも待って。
ほんとにいいの?
あたしたち、同じDNAで。
濃厚に血が、繋がってて。
「お願い緋芽ちゃん、最後まではしないよ。しないから、だから、ねぇ、いいよね?」
…………最後、まで、しない、なら。
それで皇を。
繋ぎ止めて、おけるなら。
悩む理由。
なくない?
ねぇ。
「お願い緋芽ちゃん、いいって言って?」
耳。
息。
やばい。
心臓、うるさい。
皇の、口の中の体温、耳の中まで浸透して。
皇の、重さが。
身体の温度を奪う。