第2章 君の事
「わあ・・・、美味しそう」
机上に並べられた朝食には瞳をきらきらと輝かせている。正直、冷蔵庫の中のものでちゃちゃっと作っただけなのだが、そこまで喜ばれるとは。
「でしょ?僕、基本なんでも出来るから〜〜」
「ふふ、本当に凄いですね」
の大きな瞳が、笑みで細められる。不覚にも心臓が大きく脈打つ感覚に、思わず表情を彼女から逸らした。
「・・・五条さん?」
「・・・いや、なんでもないよ。食べようか」
僕とは机上で向かい合って座り、朝食を摂る。
「・・・ねえ、」
「はい?」
「はいつから呪霊が見えていたの」
僕の問いにの動きが止まる。
「・・・分からないです。物心がつく頃から見えていました。ただ・・・」
「?」
「襲われるようになったのは最近なんです」
「・・・家族には言ってるの?」
「・・・」
再び投げかけた問いに、は少し悲しそうに表情へ影を落とした。
「・・・家族は、居ないんです」
朝食の時間で、少しだけの事が分かった。とは言え、あまり自分自身の事は話したがらない為、ほんの少しだが。
呪霊は、物心着く頃から見えていたこと。
両親は蒸発しており、気付いた時には親戚をたらい回しにされていたこと。
高校を卒業後、一人暮らしをしてバイトをしながら生活をしていたが、引っ越した先で突如呪霊に襲われてしまったとの事。
まあ、まだ会ったばかりで自分のことを話せって言うのも無理があるけど。これから少しずつ聞き出していけばいいか。
なんて、楽観的に思考する。
「少し出掛けてくるから、は待ってて」
「・・・ん、」
は不安そうに俯く。
僕はの頭を優しく撫でてやる。
「大丈夫、すぐに帰るから。この家にいる限りは安全だから安心して。家から出ちゃダメだよ」
「・・・分かりました」
「良い子だね」
玄関先で僕を見送るに軽く手を振った後、僕はマンションを後にした。