第2章 君の事
「や、硝子」
「お前、今日休みなんじゃ・・・って、何その大荷物」
「いや、の服買いに行っててさ。ついでに昨日のこと、何か分かったかと思って」
僕の言葉に、硝子は驚いたように目を見開いた。
目頭から伸びる隈は相変わらずだ。
「お前が誰かの為に買い物をしてやるとは。頭でも打ったのか」
「あのさ、僕のことなんだと思ってるの」
僕の不服気な声を無視して、硝子は試験管に入ったの血を目の前にかざす。
昨晩、が眠っている間に採取したものだ。
「お前の眼は合っていたよ。やはり呪霊はこの血に寄せられていた」
「そりゃあね。僕に限って読み間違えるなんてあり得ない」
「色々試した結果、他の呪力の混じった血を混合させることで一時的にではあるが香りとやらを薄めることが出来る」
「・・・へえ」
「混ぜる血の所有者の呪力が強ければ強いほど、効果は持続しやすいことも分かった。なるべく強い呪術師から血を採取出来れば、頓服薬くらいは簡単に作れる」
───…なるほどね。
「協力してくれそうな歌姫先輩とか、七海にその辺りは頼んでみて──・・・」
「僕で良いよ」
「は?」
硝子はまたもや瞳を大きく見開いた。
「僕の血なら、他の奴に頼む必要ないでしょ?」
「だが、定期的に血を渡しに来てもらうことになるぞ」
「いいよ、欲しい時はいつでも言って。どこに居ても、血は渡しに来るよ」
「・・・お前、」
「なあに、大した事じゃ無い。それに、上層部を無視してあの子を引き取ったのは僕の意思だ。ならば、あの子を生かすのも僕の責務のひとつだよ」
「・・・」
硝子は何か言いたげな顔を僕に向けるが、それ以上何か言及してくる事は無かった。
その後、言われたとおり採血して貰い、硝子に僕の血を渡した。
「はあ、御三家に何か言われても知らないからな」
「血にうるさいのは加茂家くらいでしょ。それに、何か言われても無視すれば良い」
「・・・」
「それじゃ、また明日と一緒に薬取りに来るよ」
「はいはい」
硝子はやれやれと肩を竦めながら、買い物袋を引き下げ歩く五条の背中を見送った。