第10章 嫉妬心
「やあ、悠仁」
を背後につれて、五条は階段を降りた地下の奥底にいる虎杖に声を掛ける。
「よう!五条先生!……と、」
虎杖の視線はふと五条の背後に移る。
途端、笑顔を象っていたその表情が真っ青に血の気が引いたものになった。
「…」
「…どうしたの、悠仁」
明らかに様子がおかしい虎杖に五条が首をかしげたその瞬間、勢いよく土下座する青年。
「ごめん!」
「え?何、どういうこと?」
「ちょ、虎杖く…」
戸惑う達をよそに虎杖は続ける。
「ほんっとごめん!宿儺に身体乗っ取られたせいであんなことに…」
そのことか。と五条は納得する。
は未だに困った様にあたふたとしていた。
「あの…私は大丈夫だから謝らないで。それに噛まれた傷だって五条さんのおかげで治ったし」
「でも宿儺の奴、にキスまで…」
「あ?」
虎杖の言葉によりも早く反応したのは五条だった。
先ほどまでの余裕な雰囲気は無く、不穏なそれが彼に纏っている。
「、キスってどういうこと?」
「え?キス…?」
「え、なんで五条先生がそんなに怒ってんの」
「悠仁は黙ってて」
五条はの前に立ちはだかり、問い詰める。
は何の事か分からず、暫く困惑した様子で視線を彷徨わせるが、ハッと何かを思い出した様に大きな瞳を見張った。
「あ…、キス……されました、そういえば…」
「は?」
更に不機嫌そうな五条の声にの肩がびくりと跳ねた。
「なんで教えてくれなかったの」
「そ、れは…」
正直、恐怖心が支配していたあの時のの記憶は暖味なものであった。
「ごめんなさい、記憶がぼんやりしてて…隠してた訳じゃないんです」
「へえ」
すっかり縮こまってしまったとそれを見下ろす五条の間に虎杖が入る。
「待って先生!2人がどういう関係かは知らねえけど…、マジでは悪くねえから!」
そのおかげか、血が上った五条の思考に若干の冷静さが垣間見える。
「…はぁ、分かってる。は上に行ってて。きっと外に恵達が居ると思うから。悠仁と話が終わったらすぐに迎えに行く」
「…分かりました」
小さな足音が階段を上っていく音を尻目に、五条は再びため息を吐いた。