第7章 雨後
「!、そういやお前!俺の身体でに……!」
「なんだ、接吻は初めてだったのか。下らん。身体はお前であろうと、アイツと唇を交わしたのは俺だ」
「いや、そういう事じゃなくて───…!」
宿儺の言葉に否定の意を示そうとする虎杖を無視して、宿儺は言葉を続ける。
「条件は2つ。1、俺が契闊と称えたら、1分間身体を明け渡すこと。2、この約束を忘れること」
「…ダメだ。何が目的かしらねえが、きな臭過ぎる。今回のことで漸く理解した。お前は邪悪だ。もう二度と身体は渡さねえ」
断固として拒否する虎杖を、宿儺は何かを逡巡しつつ見据えると心底嫌悪を表した表情でため息を吐いた。
「…ならばその1分間、誰も殺さんし、傷つけんと約束しよう。は〜、ウザ」
「信じられるか!」
「信じる信じないの話ではない。これは縛り。契約だ。守らねば罰を受けるのは俺。…身に余る使役を貪れば報いを受ける。それは小僧が身をもって知っているはずだ」
「…前は大丈夫だったろ!」
「あの時は俺とお前で利害が一致していたからだ」
「…分かった。条件を呑むから、どいてくれ」
虎杖は諦念した様に息を吐くと、静かな声色で言葉を綴った。
その様子に、宿儺は満足気に虎杖の上から退く。
漸く自身の望みが了承されたことに満悦であったが、そんな宿儺の頬に一発の拳が入った。
「なんて言うわけねえだろ!無条件で生き返らせろ。そもそもお前のせいで死んだんだからよ」
宿儺の表情から笑みが消えた。
「……ではこうしよう。今から殺し合って、小僧が勝ったら無条件で、俺が勝ったら俺の縛りで生き返る」
「…ッハ!いいぜ、ボコボコに────……」
その瞬間、虎杖の頭部が宙に舞った。