第7章 雨後
「……ちょっと君たち」
研究室で伊地知と駄弁っていたら、硝子が僕らに声を掛ける。
「もう始めるけど、そこでずっと見てるつもり?」
どうやら悠仁の解剖を始めるようだ。伊地知を連れて部屋を出る旨を伝えようとしたその時。
硝子の背後で、起き上がる悠仁の姿が見えた。
「お゛あ!?」
「……」
「……ん?」
呆然とする僕と伊地知の様子に、硝子は怪訝な表情を浮かべ後ろを振り返った。
「うおっ、フルチンじゃん」
そこには、いつも通りの悠仁の姿があった。
ああ、本当に。最高にイカれてるよ。
僕は喜悦と、彼への期待に喉を鳴らしながら笑う。
伊地知は隣でうるさいけど。
「……ちょっと残念」
「あの、恥ずかしいんすけど……誰?」
残念そうな硝子を横切って、僕は悠仁に歩み寄れば手をかざした。
「悠仁!」
「んお?」
「…おかえり!」
「おっす、ただいま!」
パン!
僕ら2人の手を合わせた音が響いた。