第1章 出逢い
「本当に連れて帰るのか?」
少女を横抱きにして、高専を後にしようとする五条の背後から家入が問いかける。
「うん」
「上への報告は?ありのままを伝えるか?」
「ダメダメ。この子の香りが呪霊を集めるなんて知ったらアイツらすぐにこの子殺そうとするでしょ。この子は呪霊の襲撃で命を落としちゃったってことにしておいて」
淡々と与えられる指示に家入は辟易とした表情を浮かべるが、構わず五条は続ける。
「あはは、いい顔するね、硝子。まあ連日任務続きだった僕を呼び出してる訳だし、お互い様って事で」
「面倒なことになっても知らないからな」
家入の吐き捨てた言葉に、五条は目隠しの下、にやりと不敵な笑みを浮かべる。
「まさか。僕を誰だと思ってるの」
少女を腕に抱いて、月明かりに照らされた夜に姿を消した五条を、家入は煙草を吹かしつつ見送った。