第6章 亀裂
「・・・っは、・・・な、に、これ、・・・・・」
本当に突然だった。
全身を纏う恐怖心に、冷や汗が肌を伝い、足はかたかたと震えていた。
そして、一つの直感が私の脳裏に過ぎる。
早く高専から出なければ。
何故そう思ったのかは分からないけれど、とにかく、誰もいない所に行かなければならないと本能がそう叫んでいた。
そう。あの日、呪霊に襲われた日に感じたものと似た感覚だ。
気付けば私は高専から飛び出していた。
初めて、五条さんや家入さんからの言いつけを破った。
それでも、これ以上ここにはいてはいけない気がして、私は人気の無い雑木林の中へ走った。
雨に濡れて、視界がかすむ。それでも走り続けた先、木の根に脚を引っかけて転んでしまう。
「・・・ぅ、」
その時、背後から聞こえた足音に、私はびくりと身体の動きを止めた。いや、正確には動けなかった。
「ケヒッ、お前か。昨日懐かしい香りを漂わせていた女は」