第6章 亀裂
「え・・・、任務?」
曇天が重く唸る中、出かける準備をしている伏黒君と虎杖君に私は呆然と問いかけた。
「ああ、緊急事態らしい」
「こんな急に派遣されることってあるんだな」
「この業界じゃしょっちゅうだ、慣れろ」
何も気にする様子なく会話をする2人を私はただただ不安げに見つめることしかできない。
なんだか、嫌な予感がする。これが何かは分からないけれど。
「・・・危険な任務なの?」
私の問いに、伏黒君はこちらを一瞥する。
「・・・現段階では何とも言えないですね。・・・特級仮想怨霊。その呪胎が発見されてるらしい」
「なんだそれ」
「・・・」
特級・・・。
前に五条さんから、呪霊にはレベルがあると説明された事がある。
「特級って、一番上のクラスだよね、大丈夫なの?」
「・・・まあ、最善は尽くしてきます」
「それじゃ、行ってくんね!」
学生寮の出口に向かう2人の背中を、私はただただ見つめることしか出来なかった。
彼らが任務に向かって、どれくらいの時間が経っただろうか。
外は雨が降り続いている。
静まり返った学生寮で、私はただ外をぼんやりと眺めていた。
真っ黒な空色に、ひとつ、チカッと雷光が微かに光った。
その瞬間、突然身を襲った見えない恐怖心に心臓が大きく脈を打った。