第6章 亀裂
「五条先生とはどんな関係なんですか」
高専に向かう車内。後部座席で隣に座る伏黒君が突如投げかけた問いに、思わず肩が跳ねた。
「どういう関係・・・」
「・・・」
どう答えたらいいのか分からなくて、悩みあぐねていると伏黒君は深く溜息を吐いた。
「いや、やっぱりいいですよ。あの人が女性とまともな関係築いてる所見たことねえし、酷い事されたり言われたりしてたら我慢しなくていいですからね」
「え、・・・いや、私たちはそんな関係じゃないよ」
慌てて弁明するが、彼は未だ疑っているようだ。これ以上私の下手な言葉選びで説明しようとしても、きっと疑いを深めるだけな気がして、何も言えなかった。
「ここが俺たちの学生寮です。さんも暫くここに住むみたいなので」
「なるほど・・・」
淡々と説明する伏黒君に、なかなか追いつかない現状への理解。家入さんの所に預けられるという内容以外は何も聞かされていない私にとって、色々想定外の事ばかりが起きている。
そんな私を見かねて、伏黒君はさらに説明を加える。
「家入さんは高専に寝泊まりすることが多いんで。ただ、五条先生の家に放置されてるアンタを見かねて、高専に呼んだみたいです」
「そっかあ・・・」
「・・・あ、さんの部屋ここです。俺の隣なので、何か分からないことあったら聞いてください」
「分かった。ありがとう、伏黒君」
一通り説明を聞き終えたとき、伏黒君の部屋の隣からまた1人、少年が出てきた。
「あれ?伏黒・・・と、誰?」
「今日から色々あって暫く学生寮に住む事になったさん」
「へ〜、じゃあ俺も挨拶しとかねえとな!」
笑顔がよく似合う好青年は私に握手の意図を含んだ手を差し出すと、人懐っこい笑顔をその表情に象った。
「俺、虎杖悠仁!よろしくな、!」
数日ぶりに純粋な人の温かさに触れた気がして、私は久々に心の底からの笑顔を彼に向けて、差し出された手を握った。
影で、呪いが嗤う。