第6章 亀裂
深夜2時。
活字の並べられた書類達を大方片した後、僕はが逃げ込んだ寝室に向かう。
音を立てないように脚を踏み入れれば、当然ながらはすでに眠っていた。
僕はゆっくりとその隣に横たわれば、の身体に片腕を乗せる。
眠っている時だけは、は僕に触れられると安心した様な顔を浮かべる。
その表情を見るだけで酷く安堵してしまう自分自身が嫌になる。まるで、何かに眼を背けている様な気がして。
何度も見た、の眠った顔を眺める。
どれだけ会う頻度が減っても、自宅に帰って来た時は必ずの隣で眠った。
まあ、朝もが起きる前に出てってしまうから、がそれを知っているかは知らないけれど。
「・・・」
僕自身の気持ちが分からない。
僕はこの子をどうしたいんだろう。
守りたい気持ちに嘘はない。
この子の事を気に入っている気持ちも自覚している。
きっと気に入っている、なんて感情以上だ。
それも分かっている。
「はあ・・・、きっと怖いんだろうね」
君にこの気持ちを伝えたとき、君が僕から離れてしまったらと考えると、呪術師として君を監視し、守るという名目に縋って、傍に居る方が安全なんだ。僕にとっては。
「・・・ごめんね、こんな利己的な男で。でも、明日から硝子が迎えに来てくれるし、高専の子達が仲良くしてくれると思うから・・・、僕も君から離れる覚悟をしないとね」
すやすやと僕の腕中で眠るに、届かない言葉を綴った後、僕は静かに眠りについた。