第2章 君の事
「たっだいま〜。〜、いる?ちょっと荷物取りに来てほしいんだけど」
玄関から居間に向かって声を掛けると、奥の方からパタパタと小さな足音がこちらへ向かってくる。
「おかえりなさい、五条さ・・・え、何ですか。その大荷物」
「ん?何って、の服だけど」
「えっ」
「ずっとその服のままって訳にはいかないでしょ」
そう。は昨晩、硝子に着替えさせられていた病衣のままだった。
「でも・・・こんなに沢山買ってきてくれたんですか」
「だって、がどんな服好きなのか分からなかったし。まあサイズは合ってると思うから好きなの自由に着なね」
は紙袋に入った大量の服に視線を落とし、呆然としている。
「あ、の・・・時間は掛かると思うんですけど、必ずお金はお返しします」
「は?」
思わぬ言葉に、僕は間の抜けた声が出る。
「いや、僕が勝手にやったことだし、お金なんていらないよ。それに女の子にたかる程、僕はお金に困ってないし」
「でも・・・」
それでも食い下がるの薄い唇に、僕は人差し指を軽く押し当てた。
「は何も気にしなくて良いんだよ」
「・・・」
僕の押しに負けてしまったのか、は渋々と了承すると、ありがとうございます。と頭を下げた。
「それと、にはしばらく僕と一緒に過ごして貰うから」
「え、」
「なに、嫌だ?僕傷ついちゃう〜」
「あ・・・、嫌とかそんなんじゃ・・・」
「なあんて、冗談だよ。確かに、急に一緒に過ごすなんて言われたら驚くよね」
驚いた様な表情を浮かべてはいるが、から負の感情は感じ取られず、心のどこかで僕は安堵した。