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オオカミ少年とおねえさん

第10章 イケメン vs. 子狼



小さな頃からこういう時に止めるのはいつも私の役目だった。


「平気だって。 兄ちゃんならあれ位ちゃんとダメージ流せるし」


彼らの所に向かう私に後ろから雪牙くんの声が追ってくる。

これまで多少の事があろうと『心配してくれてる訳だから』。 そんな大義名分の元に浩二の過干渉を本気で取り合ってなかった。
事実どこか抜けてる私をいつも助けてくれてた。

それでも私が実家を出てから離れて暮らして8年。

いつかこんな日が来る。


「真弥の身内に手を出す気はないんだ。 落ち着いてよ。 家で西瓜でも食べ」


おそらく私はいつになく腹を立ててたのだと思う。

自分が殴られた事よりも琥牙は私を見てぎょっとした表情をした。


「浩二、あんたいい加減にしなさい!!!」


と同時に浩二の方も私の剣幕に後ずさる。


「ま、真弥……?」


琥牙はその複雑な身の上を抱えながら一緒にいると言ってくれた。
言われなくったってそうするけど。


「だ、だって。 冗談にしてもこんなガキが真弥のって有り得なくね?」

「浩二がそんなだから言わなかったんだよ。 いつも言ってるでしょ!? 人を見かけでしか判断しない上に、失礼な事しちゃダメだって」


それは親や兄弟よりも大事なものなのだと私の本能が告げているから。

『真弥の事を悪く言うのは許さない』

あの時の琥牙の気持ちが私にも分かった。




そんな風に真剣な私の耳に呑気な二人の声が遠くから届く。


「……これも見た光景だよなあー…っか、真弥って怒ったら怖ぇ。 母ちゃんかと思った」

「普段はぼんやりしたお姉さんだもんね。 ああいうギャップもクるけど……そういえば最中にも止められた事あるからなあ。 巻き込まない様におれも自重しないと」

「あっ、分かったぞ!! 真弥がそそっかしいのはこのシスコン弟に守られまくってたからかあ」

「浩二って子も勘が良さそうだし。 真弥が世話好きな理由も分かった。 でもなんだろう? もう少し引っかかる」



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