第10章 イケメン vs. 子狼
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「ああ、そりゃウチはあと下に妹も二人いるから。 真弥が長女で俺が長男ね。 だからお前らみたいなチビはほっとけないタチなんだろ」
そして現在。
場所を移して私のマンションにてしゃりしゃりと私たち4人は西瓜を食べている。
チビ……そう呟いている琥牙は腑に落ちなさそうだ。
浩二と雪牙くんは似たもの同士だからかなかなか気が合うらしい。 わあわあと笑い合いながら格闘技の話なんかをしている。
言ってはいないが実際の歳も近いはず。
「そう。 そのせいで真弥って頼れる年上の男が好みだった筈なのになんで琥牙だっけ? お前みたいのがって。 お前らって兄弟には見えないけど顔はいいから、ヘタに騙されて貢がされてるのかって思うだろ?」
後腐れないのが浩二の良い所だ。
私たちが本気で付き合ってるのは分かってくれたらしい。
彼が過干渉なのは妹たちに対してもそうで、最近は高校生になる彼女らにも煙たがられてるとか。
浩二も見た目はいいんだから彼女でも作ればいいのに。
「妹だってさ。 雪牙、おまえどう?」
「オ…オレは女には興味ねぇよ。 もっと鍛えて兄ちゃんの右腕になるからさ」
「けど今は何となく。 お前相当やるだろ? 俺よりこの雪牙ってチビよりもずっと」
「それはないし、なんでみんな基準がそこなのかなあ」
『最強だった父親が人の銃弾で簡単に倒れたんだ』
本当に怖いのは元々の弱さゆえに武器を持ち始めた人間なのだと琥牙は知っている。
それは雪牙くんや珀斗さん、彼が本来居るべき筈の周囲の人々の価値観とは相容れない。
『そしたら真弥の事攫って逃げていい?』
だから最初に出会った時、実は琥牙はそこから離れようとしたのかもしれない、なんて私は思ったのだ。