第10章 イケメン vs. 子狼
「おい!! そこ、何やってる!」
声のした方向に目を向けると雪牙くんに思う存分振り回されて、さすがの浩二も息が上がっている様だった。
彼がズカズカと私たちに向かって歩いてくる。
「誰に断って真弥に触ってるんだよ」
ああ、やっぱりこうなるのね、そう思い軽く息をつく。
私の弟は昔からこうだ。
留守がちな両親で、かつ兄弟の中で唯一の男性だったからなのかもしれない。
一方浩二の矛先がこちらに向いて、あとにぽつんと取り残された雪牙くんはつまらなそうに呟いた。
「……もう、終わり?」
タッタッタッとこちらに走って来た雪牙くんが、嫌そうな表情の琥牙と手を合わせて選手交代を示した。
買い物袋に手を入れて私がアイス食べる? と訊くと嬉しそうな顔をする。
「食う!! あっちーな! いい運動になった。 いいな、アイツ。 人間の癖にタフだし壊れにくそうだ」
そして私の隣に座り込んだ雪牙くんが今度は観客となる。
「んー? どっかで見たよなあ、こういう光景」
他人だと冷静に見えるからねえ、ついそう口に出てしまって雪牙くんがぷっと頬を膨らませた。
一応身に覚えはあるらしい。
「お前も何か……あのチビと似てる。 なあ、何者なの? お前らって」
「おれは真弥の伴侶だけど」
「ハア!!?」
「そしたら浩二って言った? そっちはおれの義弟になるのかなあ。 なんか見てたら性格的に雪牙が増えたとしか思えないような気もする」
でもぶっちゃけ一人も二人も同じか、よろしくね。 やや照れがちに話しかける琥牙に浩二がブルブルと震えている。
「っみ………認めるかよ!!!」
そんな浩二の怒号と一緒に琥牙の頬に入る右ストレート。
頬を掠った様に見えたけど特に怪我などをしてる様子はない。