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オオカミ少年とおねえさん

第43章 オオカミ青年とおねえさん




こんな時は言いたいことを言えるんだけどな。


「ねえ? 三十過ぎて童貞だと魔法使いになっちゃうらしいよ」

「いい。今さら別に。 オレんとこにはそんなのはゴロゴロいる。 見付けらんなかったらそれで終わるだけ」


ぼんやりと頭を空っぽにさせて目を閉じているとふう、と気が楽になる。


「……私ならいいよ?」

「酔った女とする気になんねえし……って、まさか他の奴にんな事言ってねえよな?」

「言わないよ。 でもなんで、いっつも私が飲んでる場所分かるの? ストーカーみたい」


やや経って、雪牙さんが小声で呟くように言う。


「……女らしくはねえことは絶対ない」

「は?」

「ただ美緒は生真面目過ぎるだけだ。 こないだは悪かった」


……私は人前で泣いたことがない。

それでもこんな時ぐらいはいいと思う。
世界で一番そう思って欲しい人に思われてるなら、他はどうだっていい。


「また泣いてんのか。たく真弥より酒癖悪ぃな。 背中が濡れる」

「……好きだよ? 雪牙さん」


勢いでボソボソ言うと、力の抜けたような彼の声が聞こえた。


「ハア……いっつもそんな素直ならな。 まあ、人の事言えねえから、オレもこうやって迎えに来てんだけど」

「雪牙さんは?」

「毎回言ってるだろ? オレの伴侶はお前だって」


伴侶、つがい。
お姉ちゃんや琥牙さんがたまに使う言葉だ。
私と雪牙さんがもしもそうなら。
そうなれば。


「ふふふ……嬉しい」

「……ってのもまた、明日んなったら忘れてんだろなあ」


……私は酔って帰っても絶対目が覚める時は自宅のベッドの上で目覚める。

昔からしっかり者と言われてきたもの。



『つーか、もはや寝てるし』



それでいつも、雪牙さんと仲直りする夢なんかをみて、また翌日には、なあなあになって彼に小言を言うのよね。




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