第10章 イケメン vs. 子狼
「聞いた事ある。 ワーウルフってヨーロッパとか。 日本でも大神として祀られてる所もあるとか?」
「国によって出来損ないの悪魔の使いみたいに扱われたりもするから眉唾ものだけど。 実際にはおれは病弱だし」
だからそれは琥牙のせいじゃないと思うんだけど。
「そしたら、前から聞きたかったんだけど………もし琥牙がちゃんと成長したら、珀斗さんが言ってるみたいに琥牙は元の場所に帰るの?」
「そうだなあ。 珀斗や雪牙、里のやつらは黙ってないだろうね。 そしたら真弥の事攫って逃げていい?」
いつも通りの鷹揚な調子でそんな事を言う。
「もう。 私は真面目に訊いてるんだよ」
「どこ行っても一緒にいる、って答えにならないかな」
そう言って指先で私の髪に風を通すみたいに梳いてきた。
少し考えてからこくんと頷く。
「ならない事もない」
軽く笑う琥牙の腰に手を回す。
見えない先の事考えるよりも、それだけあればいいかな、と私は思う。
彼と一緒なら。