第10章 イケメン vs. 子狼
道端でじゃれ合いを始めた彼らにどうする? そう言って横に並んでる琥牙を見ると少し離れよ、とでも言う様に私の手を取った。
「いいけど雪牙。 怪我させたら承知しないよ」
「浩二ー! 子供だからって油断しちゃダメだよー」
とばっちりを受けないよう離れた位置についた私たちは、かくして木陰のブロック塀にもたれてスポーツ観戦を決め込むことにしたのだった。
眺めてると雪牙くんがやられてるように見せ掛けて浩二の攻撃が全然当たってない。
大の大人が振り回されてるといった風情である。
「浩二が大振りに見えるわ」
「体格差が有り過ぎるからかな。 おれとかだとまだ向こうが有利に働くんだろうけど。 雪牙はギリギリで振って遊んでるけど、あれだとお互い疲れるんだよね」
あいつって、すばしっこいけどその分持久力がいまいちなのになあ、なんて琥牙が実況をする。
浩二はスタミナある方だけど、そしたら長引くと面白いかのな。 と私もそれに乗る。
「さすがにそれは無い。 ネコ科とかなら分かるけど……でも彼、面白いね。 日本拳法だっけ? テレビで見たカラテとも動きが少し違う」
「小学生からやってるの。 高校のインターハイやスポーツ推薦枠には無いけど、空手やボクシングにも繋がる総合格闘技に近い武術らしいよ」
「インターハイ……? でもなるほどねえ。 攻撃の型が柔軟なのはそのせいなのかな」
「そういえば……匂いって、家族も匂いが似るもの? そんなので分かるの?」
「正確にいうと血の匂いだよ。 汗とか体質的なものも似るけど。 雪牙はまだ子供だから分かんないのかな。 あと、前に二度ほどちょっとしたいざこざがあったでしょ? そういうのに疎そうな真弥があんまり動じなかったのずっと不思議に思ってて。 普通の人間の女性はもっと怖がったり嫌ったりするから」
あの時の私が怖かったのは琥牙の野生にも近い殺気だった。
そんなものは格闘技とはいえスポーツの試合で見れる様なものじゃない。