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オオカミ少年とおねえさん

第10章 イケメン vs. 子狼




「えっ……と、オレは… 空手段持ちなんだけど」

「元々は日本拳法やってるのよね」


苦笑する男性の言葉を受けて私が付け加えた。


「だからこれでも褒めてるんだよ」

「は?」

「雪牙は普段なら大して怪我なんてさせずに相手を倒せるけど、そうでもない相手なのかなって思ったから」


そうなんだ。

そう聞いても私にはあまり驚きはない。
引越しの時の彼の馬鹿力を見てるし、元はあれだし。


「っんなの、どうでもいーって! 兄ちゃん、何でさっきから冷静なんだよ!! コイツ真弥の愛人だぜきっと」


それを聞いて思わずぶっと吹き出してしまった。


「……ご、ごめん」


「家族でしょ?」

「よく分かったね。 自衛隊入ってる私の弟」

「匂いがしたから……あっ、おい」


気付くと私たちの会話を聞いてないのか、再び雪牙くんがダッシュで浩二に飛びかかるところだった。
浩二がすっとそれを脇へ避ける。

好戦的だなあ。
そういえば雪牙くんって、初対面からこんな感じだったような。


「………なんなの? 真弥、この子…っつツ!」


背後で素早く体制を整えた雪牙くんが浩二に足蹴りをする。
見事にそれが脛にクリーンヒットし顔を歪める浩二。

今度はふわっと体を浮かせたあとの顔面への蹴りに慌てて両肘でそれを受け止める。
彼が驚いた顔をしていたのは多分その瞬間に自身の大きな体が3メートルほど後ろに吹っ飛んだからだろう。

浩二がダン、と丸めた背中を塀で止めて目を丸くして雪牙くんを見ていた。


「……ははッ、何かやってんのか? お前」


雪牙くんは雪牙くんで自分の攻撃をガードされたのが意外だったらしい。

それなのになぜか嬉しげな表情。


「……なんだ 、チビ。 お前?」

「最近遊んでなかったからな、おもしれえ。 この際いいや。 人間でも」


そして浩二はこんなでもかなり喧嘩っ早い性格でもある。
面白がって煽ってくる雪牙くんにカッとなった様子で仕掛けてく。



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