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オオカミ少年とおねえさん

第10章 イケメン vs. 子狼




「…………真弥?」


前方から男性の声に呼ばれてふと顔を上げる。

身長186センチ。
ひと目でわかるいかにもスポーツマンらしい体格。
男らしくキリッとした顔の造作に反して瞳だけは優しげ。
道を歩いたら年頃の女性がちらほら振り向く位にはオトコマエでもある。


「浩、二。 なんでここに?」

「真弥こそいきなり引越しなんて。 オレに話も無く」


つい彼から目を逸らす。
雪牙くんがキョロキョロと私とその男性を推し量るように見比べて、次に自分の兄に視線を移す。

直後、通せんぼをするみたいに私の前にばっと立ちはだかった。


「んだよ、お前」

「えっ……あっ。 雪牙くん」


『こうやって一旦懐に入れば身内みたいな感じになるから』


つい先ほど琥牙がそう言ってたのを思い出した。

完全にまた相手を敵認定して威嚇してる様子の雪牙くん。
一方こんな時に一番危険であろう琥牙は……表情を変えずに無言である。


しかしおそらくこの状況はあまり良くないんだろう。
そんな光景に眉を上げるイケメン。


「は、なに? このちびっ子たち」

「チビじゃねえよ」


そんな彼に首を傾げる。
少なくとも雪牙くんが小さいのは事実よね。


「雪牙くん待って」

「雪牙」


噛み付きそうな勢いで『敵』に向かって行こうとした雪牙くんを私たちが同時に止めた。

その相手が子供に対してよくそうするように優しげな目を細めて腰をかがめる。


「真弥の知り合い? 元気だなあ」

「真弥の事、呼び捨てにすんじゃねえよ!」


「それはおまえもだろう? 止めといた方がいいよ。 怪我するから」


のんびりとした口調でたしなめる琥牙に、雪牙くんが有り得ないという表情で自らを親指で指す。


「………俺が?」


でも、客観的にみたら誰でもそうだと思うんだけど。
身長差とか、50センチ近くありそう。

そんな雪牙くんに琥牙が申し訳なさそうに目の前の男性をちらと見てから肩をすくめた。


「ううん。 もちろん向こうが」



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